田村 憲司(教授) 研究紹介

土壌とは

土壌は、母材・気候・生物・地形・年代・人為といった土壌生成因子の総合的な相互作用によって生成される歴史的自然体として定義されます。自然界において土壌は独自の形態・性質・機能を持っています。このような自然体としての土壌を土壌体(soil body)と呼んでいます。それに対し、土壌体の一部を取り出した物質を土壌物質(soil material)といいます。一般的には、土壌は、土壌物質として認識されています。土壌を土壌物質として捉えるのと土壌体と認識したのとでは、土壌研究だけでなく、環境教育においても、根本的にその研究教育方法が異なります。今まで、教育研究の現場で土壌を扱う場合、土壌物質として扱っている例が数多く見受けられます。
土壌を土壌体として認識することがいかに重要であるか。それは、土壌観が変わってくることからも明らかです。土壌を土壌体と認識すると、土壌は先程の土壌生成因子の組み合わせの仕方、土壌生成作用の強弱によって、いろいろな土壌が生成され、それは、土壌生成分類学的に様々な土壌に分類され、また場所が違うとさまざまな土壌が分布し、生成因子、1つ1つと密接な関係性が認められます。さらに、その土壌が非常に長い時間かかって生成されるものとして理解されるのです。

 

研究テーマとフィールド

 研究テーマ

○地球温暖化が土壌生態系に与える影響
○モンゴル高原における草原生態系の保全と土壌環境
○土壌の垂直成帯性と植生系列
○土壌の環境教育と水環境学習プログラムの開発

 研究フィールド

○屋久島
○草津白根
○利尻島
○菅平高原
○菅生沼
○モンゴル高原
○全国の自然観察の森、自然系博物館

 

土壌の環境教育

 土壌の環境教育の推進

 土壌は、かけがえのない資源であり、陸上生態系の基盤であり、陸上のあらゆる生物の生存にとって欠くことができないものです。しかし、土壌になじみのない一般市民が、どれだけ土壌のことを知っているのか、また私たちのまわりにはどのような土壌が分布して、どのような働きを担っているのかについては、理解されていないのが実状です。それは、わが国においては、初等から高等教育の現場で土壌学を学習しないで社会に出ていく人がほとんどだからです。環境教育においても、動植物に比べて土壌の認識はほとんどなされておらず、また教材化も普及しておりません。
 これからの世代を担う子ども達にこそ、土壌の教育、特に土とふれあう環境教育が是非とも必要であると思われます。

 全国には、自然観察の森やいきものふれあいの里のような自然観察を主体とした環境教育の野外施設が多数あり、ネイチャーセンター等のビジターセンターを備えていないが、自然観察路(ネイチャートレイル)がある施設まで含めると全国にかなりの数の環境教育のフィールドがあります。このような施設では、施設の職員だけでなく、教育普及ボランティアや各種団体が施設を管理運営していて、自然観察会も数多く開催しています。
 しかしながら、土壌の観察会を開催し、指導できるような人材がほとんどいません。土壌環境化学研究室では、自然観察の森等の環境教育施設において、土壌の観察会を開催してきましたが、一番重要なことは、上述の全国の各地に存在している多くの環境教育施設において、土壌の観察会が開催されるようになり、来園者が土壌についての認識を新たにするような機会がもてるようになることです。そのためには、これからの世代の若い人たちが、その主体者となって、土壌の環境教育を推進していく以外に、土壌の環境教育の普及は望めません。今こそ、私たちと、土壌の環境教育普及のため、いっしょに頑張っていきませんか?

 

 

 業績

著者 論文・著書 雑誌名, 巻, 頁 出版年
Tsuyoshi kawakami,Masumi Ishizaka,Yasuo Ishii,Heesoo Eun,Jyunji Miyazaki,Kenji Tamura and Teruo Higashi Concentration and Distribution of Several Pesticides Applied to Paddy Fields in Water and Sediment,from Sugao Marsh,Japan. Bulletin of Environmental Contamination and Toxicology.74(5):954-961 2005
Kenji Ohse, Kenji Tamura,Haruo Tanaka and Teruo Higashi Influence of forest decline on various properties of soils at Mt.Hirugatake, Tanzawa Mountains, Kanto District, Japan. ⅣChanges in the amounts and composition of soil organic matter in surface soils. Soil Sci. Plant Nutr.,51(1):37-42 2005
王 莉 ・ 東 照雄 ・ 藤村達人 水耕栽培下でのアブラナ科(Brassica)植物によるカドミウムと無機養分の吸収特性 日本土壌肥料学雑誌75(3):329-337 2004
蕪木佐衣子・世良耕一郎・織田久男・川崎 晃・末次忠司・二村貴幸・田村憲司・東 照雄 涸沼川流域における平水時河川水の懸濁物質による主要元素濃度 水環境学会誌27(3):205-210 2004
Higashi,T. Kenji Ohse, K.Morimoto, H. Tanaka, K. Tamura Changes in soil organic matter with forest decline at Tanzawa Mountains, Kanto District, Japan. Humic Substances and Soil and Water Environment, International Meeting of IHSS, 181-183 2004
Higashi,T. R.Sohtome H.Hayashi,K.Ohse,
T.Sugimoto,K.Tamura and M.Miyazaki
Influence of forest decline on various properties of soils on Mt.Hirugatake, Tanzawa Mountains,Kanto District Japan. I. Changes in vegetation, soil profile morphology, and some chemical properties of soils. Soil Sci. Plant Nutr.,49(2):161-170 2003
Ohse,K. Y.Ohkawa, K.Tamura and T.Higashi Influence of forest decline properties of soils on Mt.Hirugatake,Tanzawa Mountains, Kanto District, Japan. II. Changes in some physical and chemical properties of surface soils. Soil Sci. Plant Nutr.,49(2):171-178 2003
Ohse,K. K.Tamura and T.Higashi Influence of forest decline on various properties of soils on Mt.Hirugatake, Tanzawa Mountains, Kanto District, Japan. III. Changes in microbial boimass and enzyme activities of surface soils. Soil Sci. Plant Nutr.,49(2):179-184 2003
蕪木佐衣子・世良耕一郎・織田久男・川崎 晃・末次忠司・諏訪義雄・二村貴幸・田村憲司・東 照雄 分析法を用いた河川水の溶存および懸濁物質の元素分析 RADIOISOTOPES,52(2),81-92 2003
加藤 拓・東 照雄・上條隆志・田村憲司 三宅島2000年噴火火山灰試料の化学的および鉱物学的諸性質について ペドロジスト46:14-21 2002
田村憲司・東 照雄・永塚鎮男 若草山の土壌 草地生態32(33):25-32 2001
Kitagawa,Y.,S.Nagatsuka, T.,Higashi and K.,Tamura Clay mineralogy of a mountain podzol in Jumonji Pass, Okuchichibu Mountains. Pedlogist, 45:112-117 2001
田村憲司・佐藤雅彦・東 照雄 利尻島に分布する土壌の断面形態とその特徴 利尻研究19:1-10 2000
田村憲司 土壌の環境教育の普及と啓蒙 農業および園芸77:618-623 2002
田村憲司 日本の土壌(2)ポドゾル性土(2)湿性腐植型ポドゾル性土 農業および園芸77(8)1-2 2002
田村憲司 わが国の消滅危惧土壌のリストアップ、-レッドデータ土壌の保全と教育の普及- 農業および園芸76:333-334 2001
田村憲司 「草地・湿地の保全」”陸上生態系による温暖化防止戦略” 博友社 pp.132-142 2000
Ohya, S., K.Tamura and J.Azuma Microbial biomass and enzyme activity of soils in an urban area. Soil Microorganisms54:1-6 2000